『資治通鑑』(しじつがん・しぢつがん)294巻は、中国の歴史書で、北宋時代、司馬光(1019〜1086)の著作。古代、周の威烈王から五代後周の世宗まで1362年間の歴史を記したものである。
 中国の歴史書は、扱う時代から、一つの時代だけを記した「断代史」、時代を跨ったもの「通代史」、編纂者が勅撰である「正史」、民間の作者による「稗史」、更に編纂方法による「紀伝体」(伝記の形式)と「編年体」(年表形式)に分けられる。
 有名な司馬遷の『史記』は通代史・正史・紀伝体ということになる。『資治通鑑』は通代史・編年体の史書で、歴代の正史を読む手間が省ける歴史書といえる。しかし、それも読みきれないほど分量が多いので、南宋の朱熹(1130〜1200)は弟子とともにこれをもっと簡便に読めるように改編した。それが本書である。内容は、編年体で事項ごとに綱要を設け、概要を説明し、必要に応じて詳細を読めるようにした。簡明な通史を作製したのである。その後、本書は朱子学を奉じる政治家に受け入れられ、特に朱子学の盛んであった朝鮮李朝(1392〜1910、中国では明・清時代)では最も重んじられた書物の一つであった。
 朝鮮では古くから西洋に先んじて、金属を用いた活字印刷が盛んであった。本書が用いた活字は、活字鋳造年代がはっきりしているもののなかでは、二番目に古いものである。最後に汳季良(べんきりょう)が記した1422年の跋文があり(当時は朝鮮では中国の年号を用いた)、活字はその鋳字が命じられた年号庚子をとって庚子字と名付けられる。その活字を用いて出版したものには他に『史記』『漢書』などもあるが、完全な本として遺っている例は極めて稀で、本書は朝鮮版のなかでも一級品に属し、紀州藩文庫のなかでも最も貴重な漢籍の一つである。



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