本書は、中国の類書と呼ばれる百科事典で、隋・唐時代の成立に係り、成立年代の最も古いものの一つである。そもそも中国では古代から分類の学問が尊ばれ、目録や字書など分類による堅固な文化を築いてきた。幅広い知識を簡便に得ることができる類書は、為政者の最も好むところで、三国魏の文帝曹丕が『皇覽』を作成せしめてから類書の歴史は清朝まで続き、唐代の『藝文類聚』『初学記』、宋代の『太平御覽』、明代の『永楽大典』など皆皇帝の学問や執政を支える勅撰の教養書であった。宋の太宗は1日3巻読めば『太平御覽』1000巻は1年で読み終える、「開巻有益」の書として称賛した。また宋代以降は個人による民間の編纂書も増え、日用百科の『事林広記』や植物学の『全芳備祖』などテーマ性も帯び、中国人の旺盛な知識活動の重要な一翼を担っていった。
 本書の著者虞世南(558〜638)は隋代に宮中に仕え、秘書郎として秘書省の後堂「北堂」で本書を編纂したことによりこの書名がついた。唐に世が変わっても太宗李世民に博覧を讃えられるほどであった。19部851類に分かち「帝王」「皇妃」などの政治から「舟」「車」などに至る幅広い知識を提供、出典を示して注釈を加える、後世の手本となった。しかし、宋代には本書の伝本は既に入手しにくくなり、民間に幾本かを伝えるばかりで、出版もされなかった。明万暦28年頃、陳禹謨が出版したのが初めての刊本であった。これが即ち本館所蔵本である。清代、考証学者の手によってより良いテキストが校訂されるが、明刊本である本書は、類書の歴史を物語る貴重な遺産である。



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